物価 2015 4 25
物価は、上がらないかもしれません。
いや、正確に書くと、需要がないと書くべきでしょう。
つまり、商品は売れない。
いくら魅力的な商品を作っても売れない。
このように書くと、外国人は、
「日本は人口が減ってしまったのか」と思うでしょう。
いや、日本の人口は、あまり変化していません。
しかし、人口構成が大きく変化してしまったのです。
昔の日本だったら、若者主体の社会でしたが、
今の日本は、高齢者主体の社会に変わりつつあるのです。
年を取れば取るほど、消費意欲は減少していきます。
一番、わかりやすいのが、「食べる量」です。
子供や若者は、よく食べ、よく飲むのです。
だから、食品や飲料は、よく売れます。
これが、老人になると、食べる量が減ると同時に、
水分摂取量も減ってくるのです。
その結果、食品や飲料を扱う店は、不景気になるでしょう。
私が住む巨大なコンドミニアム(高層住宅)は、
かつては、子供が多く、
小学校へ登校する際の「通学班」は各階ごとに編成されていましたが、
子供が減少すると、たとえば、1階と2階で「通学班」を編成し、
やがて、1階、2階、3階で「通学班」を編成するようになりました。
今は、それも困難な状況です。
子供が減少する一方で、住民の高齢化が進み、
いつの間にか、高層住宅が「老人ホーム」へ変化していったのです。
特に、行政の認可を得たわけではありませんが、
住んでいる住民の多くが高齢者になった今、
もはや、コンドミニアムと呼ぶよりも、
「老人ホーム」と呼んだ方が正確でしょう。
住民の年齢的な変化によって、
周辺にあった店舗は経営が苦しくなりました。
「アイスクリームが飛ぶように売れた時代が懐かしい」と、
商店の経営者は、言います。
「今は、アイスクリーム2割引の日を設定しても売れない」と嘆きますが、
そもそも、老人はアイスクリームを買わないのです。
住民の大半が高齢者となった現在、アイスクリーム商法は通用しないのです。
昔は、子供が多く、
ジュースなどの清涼飲料水が飛ぶように売れたでしょうが、
今は、いくら値引きをしても、そういうものは売れないでしょう。
老人は、清涼飲料水を飲まないからです。
このような現象を経済学的に書くならば、
供給(店舗)は変化ないが、需要は、いつのまにか消えていた。
これが、デフレを引き起こしている。
つまり、人口構成の変化による需要の減少がデフレを引き起こしていると言えるでしょう。
私が住む地域は、東京近郊です。
このような地域でも、高齢化の影響は大きいのです。
地方に行くと、どうなっているのでしょうか。
あれは、幻だったのか。
高層住宅の各階で、子供たちの楽しそうな声を聞いたのは。
この高層住宅が老人ホームへ移行しつつある今、
子供たちの楽しそうな声は、幻になりつつあります。
やがて、歯が抜けるように、
高層住宅の各階で「空き部屋」が増えてくるでしょう。
人口ピラミッド 2005 5 3
書名 「人口ピラミッドがひっくり返るとき 高齢化社会の経済新ルール」
著者 ポール・ウォーレス 翻訳 高橋健次 出版社 相思社
低迷する個人消費、低迷する株価、低迷する地価。
こうしたものは、バブル経済の崩壊が原因で、傷口さえ治れば、
つまり、過剰な設備、過剰な債務、過剰な雇用が改善されれば、
日本経済も、元に戻ると考えていませんか。
しかし、三つの過剰と言われた「設備、債務、雇用」が改善しても、
日本経済は、さえない状態が続いています。
バブル経済の崩壊という「外傷」に目を奪われていますが、
もっと根本的な問題が潜んでいませんか。
それは、「人口ピラミッドがひっくり返る時」です。
日本経済も、日本の社会制度も、
人口構造がピラミッド型であることを前提として、
成り立っているはずです。
そのピラミッドが、ひっくり返る時、どうなるか。